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甲状腺の病気

目次

  • のど元の異常 甲状腺の病気
  • 甲状腺の役割は?
  • 甲状腺ホルモンの役割は?
  • ホルモンの量はどう決められる?
  • 甲状腺ホルモンの量が異常になる原因は?
  • 甲状腺ホルモンが増え続けると…
  • 甲状腺ホルモンが少なくなると…
  • 甲状腺のしこり

のど元の異常 甲状腺の病気

歌手の絢香さん、ピンクレディーのケイちゃんこと増田惠子さん、岩崎宏美さん、そしてXJAPANのYOSHIKIさん…。バセドウ病に罹った芸能人がテレビを通じて告白したことで、甲状腺の病気が一躍メジャーになった感があります。しかし、女性に特有の病気と思われがちですが男性患者の方もたくさんいることなど、まだまだ、ちゃんと理解されていないようです。そこで今回は、静岡市立静岡病院の脇先生にお話しをうかがいました。特定の予防法はないため、早期発見・早期治療を心がけてください。

 

甲状腺の役割は?

甲状腺は首の前側、のど仏のすぐ下にあります。蝶の形をしていて、大きさが縦・横4㎝ほどありますが、柔らかいので自分で触っても分かりません。しかし腫れてくると手で触れることできるだけでなく、大きくなっていることが見た目にも分かります。  甲状腺は、昆布、わかめなどの海藻類に含まれるヨウ素を材料に、からだに必要不可欠な甲状腺ホルモンを作る働きをしています。

甲状腺ホルモンの役割は?

大きくはつぎのようです。 ①新陳代謝をアップ  からだが食べものから吸収した栄養素からエネルギーを作り出したり、老廃物を排出・浄化し、新しい細胞をつくり出しすことを促します。からだを活動モードにするのです。 ②成長を促進  成長ホルモンとして胎児のからだや脳の発育や発達を促進してくれます。

ホルモンの量はどう決められる?

甲状腺ホルモンの作られる量は、脳下垂体というところから出される甲状腺刺激ホルモンによってコントロールされています。血液中の甲状腺ホルモンの量を脳下垂体が感じ取り、少ない時は「もっと多く」、反対に多い時は「もっと抑えて」と、刺激ホルモンの量を増減して、甲状腺に伝えているのです。  お話ししたように甲状腺ホルモンは、全身の代謝を高める働きをするホルモンですから、多くても、また少なくても、からだに問題があらわれます。このホルモンの分泌量の異常以外に、甲状腺に腫瘍(しゅよう:しこり)ができることもあります。順番に、お話ししていきましょう。

甲状腺ホルモンの量が異常になる原因は?

血中の甲状腺ホルモンの量が、多すぎたり少なすぎたりと、異常になるとさまざまな症状がでます。原因となる主な病気は、自己免疫で起こるものが多いです。  私たちのからだには、免疫という病気から守るための機能があります。自分の体の外から入ってきた異物(細菌やウイルスなど)を、自分自身の本来の細胞と区別して、リンパ球などが免疫物質を作って攻撃し取り除いてくれているのです。  免疫が正しく働くためには、外からの異物と自分の細胞の見分けができていなければなりません。もし、何らかの原因で見分けがつかなくなったときには、自分自身の細胞などを異物と勘違いし、自分のからだの一部を攻撃したり排除しようとします。自分自身に対する免疫反応のことを自己免疫といい、これによっておこる病気を自己免疫疾患と呼びます。今回のテーマである甲状腺ホルモンの異常をおこすバセドウ病などは、その代表例です。自己免疫疾患は女性に多く発症することが特徴ですが、男性にもおこります。

甲状腺ホルモンが増え続けると…

甲状腺ホルモンが血中にいっぱい出ている状態を、甲状腺機能亢進症といいます。昔のアメリカ車が大量のガソリンを消費して走っていたように、無駄にエネルギーを消費している状態と言っていいでしょう。いろいろな病気がありますが、もっとも有名なバセドウ病についてお話ししていきます。

【原因】
バセドウ病は、自己免疫の異常によって、必要もないのに「どんどん働け」と甲状腺に命令するものがリンパ球から作られ、甲状腺ホルモンが大量に出し続けられる病気です。この原因は、はっきりわかっていませんが、ストレスや遺伝的なもの、過労なども関係があるといわれています。



【症状】

・動悸、息切れがする、体温が上がる、暑がりになる、汗をたくさんかく、脈が多くなる、下痢をする、体重が減るなど、指先・手足や体のふるえなど(バセドウ病に限らず、甲状腺のホルモンが多いときの共通の症状です)
・甲状腺の腫れ  バセドウに多く見られる特有の症状です。くびの前面の甲状腺が全体的にふくらみ、くびが太くなったように見えるケースもあります。人によって程度はさまざまで、腫れない人もいます。
・眼球が出てくる  過剰に作られた甲状腺ホルモンによって、眼球の後ろに脂肪が蓄積したり、眼球筋が太くなったりすることにより、目が大きく見開いたり飛び出してくることがあります。
眼球が出てくることがバセドウの特徴のようにいわれますが、実際にはそう多い症状ではありません。物が二重に見えたり、視野が悪くなったりドライアイになるなど、目にさまざまな症状が出てきます。このような場合には、甲状腺の治療とともに、専門の眼科医の治療が必要です。

【検査と治療】
当てはまる症状があるならば内分泌科、または内科を受診してください。血液検査で甲状腺ホルモンの数値を測ったり、エコー検査で甲状腺の大きさや血流、しこりの有無などについて調べます。



バセドウ病の治療には、次の3つの方法があります。
薬物療法
甲状腺ホルモンが大量に作られるのを抑える薬を使います。早ければ1年間程度でホルモン量が正常になりますが、低下しすぎても障害が出るので、薬の量を徐々に減らしていきます。薬を飲み忘れたり自分の判断で中断すると再発してしまう場合が多く、また甲状腺の治療薬は副作用も多いので、必ず医師の指示に従ってください。
アイソトープ療法
ヨウ素のアイソトープ(放射線を発する物質)を飲むことで、甲状腺の細胞を減少させる治療法です。放射性物質を飲むということに抵抗があるかもしれませんが、実際にはレントゲン程度の被ばく量で、健康への害はほとんどないと考えられています。効果は2ヶ月から半年ほどであらわれます。
手術と違って、薬を一回飲むだけで簡単に終われるのが特徴ですが、甲状腺の働きが落ちすぎることもしばしばあります。この場合は後で述べるように甲状腺ホルモン剤を飲んで補います。



手術療法
甲状腺を部分的に切除することで、作られる甲状腺ホルモンの量をコントロールします。完全に取り除く手術であればバセドウ病の再発はありませんが、この場合は甲状腺ホルモンが作られなくなるため、その後に甲状腺ホルモン剤を飲み続ける必要があります。

バセドウ病は完治することはないと言われていますが、薬でコントロールすれば普通の健康な人と同じような生活が送れるようになる病気です。心臓にとても負担がかかる病気なので、放っておくと心不全になる確率が高くなりますし、また骨も弱くなります。ぜひ病院を受診してください。

甲状腺ホルモンが少なくなると…

甲状腺の働きが鈍くなって血中の甲状腺ホルモンが不足している状態を、甲状腺機能低下症といいます。

【原因】
あとで説明します橋本病の場合が多いですが、ヨードの過剰摂取や不足、ストレスなどが原因の一時的な機能不全、他の病気の治療のためなど、さまざまなものがあります。

【症状】
・だるい、疲れやすい、やる気が出ない  脳や神経の活動が鈍くなり、やる気がなくなったり、集中力や記憶力が低下したりします。
・むくむ  汗をかきにくくなったりするため、体内に余分な水分がたまり、むくみやすくもなります。指で押しても、へこんだくぼみが残らないのが特徴です。
・便秘、体重増加  胃腸の働きが低下して食欲が落ちますが、代謝が悪くなって消費カロリーが減るため、太りやすくなります。腸の働きが悪くなって便秘になることもあります。
このように、甲状腺ホルモンの低下はいろいろな症状をおこしますが、人によってさまざまです。また、やる気がなくなったり、すぐに眠くなったり、記憶力が低下したりすることもあるため、うつ病や更年期障害、高齢者に至っては認知症と誤解されることもあります。



【検査と治療】

血液検査をして、血中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値を計ります。健康診断の検査において、コレステロールなどの数値の上下から甲状腺の病気が見つかることもあります。
治療には、甲状腺ホルモン剤を飲んで補えば、体の不足している状態をただすことができます。これで、 ほとんどの症状が出なくなります。

【橋本病について】
甲状腺機能低下症の原因で最も多いのが橋本病で、自己免疫によって甲状腺が誤って攻撃を受け続けて慢性的な炎症を起こす病気です。橋本病の場合、甲状腺に炎症があるだけでは、特に問題はありません。ほとんどの橋本病の患者さんは、甲状腺が少し腫れることもありますが、血中の甲状腺ホルモンの量は正常です。



ただし、次のようなケースなどは問題となります。
・甲状腺が大きく腫れる場合 ・甲状腺機能低下症になり、血中の甲状腺ホルモンが少なくなる場合
・一時的に血中の甲状腺ホルモンが多くなり、発汗や動悸、体重減少などの症状がでる場合

甲状腺のしこり

甲状腺には軟らかい腫瘍(しゅよう:しこり)や、硬いしこり、水風船みたいな嚢胞(のうほう)、などができる場合があります。これらのしこりには、良性のものが多いですが、まれに悪性のガンもあり、さまざまです。

【検査】
エコー検査が基本です。必要に応じて、CT、MRI検査などと、腫瘤の細胞を注射器で吸引して採取し病理診断を行い、悪性良性の判断をします。



【良性】

良性の小さなしこりは、生活上支障がなければ、積極的に治療する必要はありません。実際、甲状腺の腫瘍を抱えながらも、ごく普通の生活をして一生を過ごす人はたくさんいます。薬物療法や手術が必要な場合もあります。
ただ、しこりが大きくなっていったり、がんが合併したり、甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じてくることもまれにありますから、数か月から半年に一回程度の定期的な経過観察を続けてください。

【悪性】
腫瘤に気付いたり、また無症状でも健診の超音波検査などで甲状腺の悪性腫瘍(がん)がみつかることがあります。甲状腺のおよそ9割の悪性腫瘍は乳頭がんといわれるもので、悪性とはいうものの、命にかかわるものはわずかです。進行も遅く、多くの場合5年から10年という期間をかけて、ゆっくり大きくなります。早期発見も比較的しやすく、手術などの適切な治療が施されれば、おおかたは完全に治すことができるものです。

甲状腺の病気は、まずは病気を疑い、気づき、病気を見過ごさないことが大切です。治療すれば健康な生活を送れます。しかし、症状が良くなっても治療は長く続ける必要のある場合も多いです。甲状腺の病気のこのような特徴を知っておきましょう。

取材にお答えくださった脇 昌子先生

静岡市立静岡病院 副病院長
診療部長 内分泌・代謝内科 主任科長