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歯のおはなし

目次

  • いつまでも元気のもと 歯のお話し
  • 80歳になっても20本の歯。8020運動を知っていますか?
  • むし歯のはなし  むし歯菌は砂糖が大好き
  • 歯周病のはなし  1歳以上の約8割が…

いつまでも元気のもと 歯のお話し

むし歯が!」、「歯周病かも?」。こうなったら、みなさんどうします?歯医者さんに行って、治してもらいますよね。痛いし、抜けたら困りますから当然です。では、「どうして歯が大切なのか」と質問されたら、なんと答えるでしょうか?「しっかり噛むため」、「ちゃんと話すため」…いろいろありそうですが、今回、お話しいただいた大久保先生は「みなさんが、生きがいのある生活を過ごすため。その支えとなるのが歯科医の目的。歯の病気を治すのは、そのための手段」と話します。先生と一緒に歯の大切さ、そして歯の病気について考えてみましょう。

80歳になっても20本の歯。8020運動を知っていますか?

みなさんは、8020(ハチマルニイマル)運動をご存知でしょうか?「80歳になっても20本以上の歯を保って、元気な人生を送りましょう」という活動で、日本歯科医師会と厚生省(現・厚生労働省)とで平成元年から始めた運動です。

◆20本という数字のはなし
なぜ20本?と思う方もいらっしゃるでしょう。私たち歯科医は、80歳を過ぎても元気な方が多くの歯を持っていることを、日々の診療の中で知っていました。しかし、それを証拠づけるデータはありませんでした。そこで運動スタート前に、実験を行ったのです。内容は、「豆腐」のような柔らかいものから「スルメ」のような硬いものまで、いろいろなものを噛んでいただいて、その後に吐き出してもらい、どの程度かみ砕かれているのかを調べるというもの。ここから分かったことは、20本以上あれば、どんなものでも、それなりに噛むことができるということでした。この20本を、数値目標の裏付けとしたのです。

◆80歳という年齢のはなし
もうひとつの80歳は、みなさんも思い当たるでしょう。日本の平均寿命は男性が79・64歳、女性が86・39歳(平成26年、厚生労働省調査)でものを噛んでいただいて、その後に吐き出してもらい、どの程度かみ砕かれているのかを調べるというもの。ここから分かったことは、20本以上あれば、どんなものでも、それなりに噛むことができるということでした。この20本を、数値目標の裏付けとしたのです。

◆80歳という年齢のはなし
もうひとつの80歳は、みなさんも思い当たるでしょう。日本の平均寿命は男性が79・64歳、女性が86・39歳(平成26年、厚生労働省調査)ですが、これにちなんだ数字です。わが国は、世界でもトップクラスの長寿国で、高齢者と呼ばれる65歳以上の方の人口がとても多い国です。総人口に占める高齢者の割合が7%を超えると「高齢化社会」、その倍の14%以上になると「高齢社会」と呼びますが、7%が14%になるまでに、フランスでは1世紀以上の時間が流れましたが、日本は24年という世界を驚かすスピードで「高齢社会」に突入しました。さらに、高齢者の割合が21%以上の社会を「超高齢社会」といい、日本は平成19年に21・5%となり、世界最初の「超高齢社会」国家となりました。
平均寿命が延びること自体は、決して不幸なことではありません。ただし、それには、最期まで健康でいられるという条件が付きます。ところが、日本の健康寿命は男性が70・42歳、女性が73・62歳(平成26年、厚生労働省調査)。平均寿命との差の時間は介護が必要ということになります。これではせっかく長生きしても、自分なりの人生を送ることはできません。このように高齢化した社会で、最後まで自分の口で食べられる人生をと願って、8020運動をスタートさせたのです。
8020を実現するためには、歯を失う大きな原因となっているむし歯と歯周病のことを知っていただく必要があります。2つとも感染症ですが、虫歯で失う比率が約32%、歯周病が約42%で、この2つだけで74%も占めています。

 

 

むし歯のはなし  むし歯菌は砂糖が大好き

◆むし歯ができるまで
赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいる時は無菌状態ですが、産道を通るときに鼻や口、皮膚に菌がつきます。そしてオギャーと泣いた瞬間に、空気と一緒に菌を吸い込みます。このように人間と菌(菌には良い菌と悪い菌があるので誤解のないように)は産まれるときからの長いつきあいで、私たちの口の中にも300~400種類以上の菌が住んでいます。成人であれば唾液1㎖に1億くらいの菌が存在していて、その中に、むし歯を作る菌も存在しています。このむし歯菌、普段は唾液の中に浮いているだけで、これだけではむし歯にはなりません。
歯に限らず、病気は菌が組織に張り付くことによって始まります。むし歯も同じで、むし歯菌が歯に付くことが原因となります。順を追って説明しましょう。
①むし歯菌は自分の力では歯に付くことができないため助けが必要ですが、その役割を果たすのが砂糖(正しくいうと砂糖に含まれるショ糖が中心)です。むし歯菌は、口の中に入ってきた砂糖や歯に残った砂糖を栄養分として吸収・分解し、取り出した粘着性の物質で自分のからだを包みます。
②このネバネバ成分により歯の表面にくっつき数を増やしていくのです。
③やがて、そこに他の菌も集まってきて歯の表面を覆っていきます。これをバイオフィルム(歯垢・プラーク)といいますが、これは食べカスの集まりではなく菌の集合体です。
④バイオフィルムの中の菌が砂糖の成分から酸を作り出し、歯の表面を覆うエナメル質(カルシウムとリンからできています)を溶かしていきます。

◆むし歯の予防について
むし歯の過程をお話ししましたが、酸によって溶かされた歯は、ごく初期の段階以外は修復することはできません。自分でその段階にむし歯を見つけることはかなり難しいので、自覚症状が出る前に歯科医の診察を受けるようおすすめします。  日常生活では次のような予防を心がけてください。 ①歯をみがく─むし歯菌が歯にくっつくのを防ぐには、食後の歯ブラシによるブラッシングが効果的です。 ②洗口剤を使う─洗口剤は、バイオフィルムを溶かす効果があります。 ③砂糖の多い食べ物を食べる回数を減らす─砂糖と聞くとチョコレートなど甘いものが思い浮かびますが、炭水化物も分解されて糖になります。決められた食事以外の時、例えば仕事の合間の間食などに甘いものを食べたり飲んだりすると、口の中はむし歯のできやすい環境になります。
これらの予防は、年齢や生活環境にもよりますので、気軽に通える「かかりつけ歯科医」を持ち、相談することをおすすめします。

◆むし歯の感染について
むし歯は、次にお話しする歯周病と同じように唾液による感染症で、おもにお母さんから赤ちゃんや子どもにうつることが分かっています。赤ちゃんの時は、お母さんの口うつしや同じお箸やスプーンを使って食べさせていますが、あの時に感染するのです。 こういう話をすると、神経質に考えがちなお母さんは、むし歯にならないように食事だけでなく、子どもへのスキンシップもしなくなることがあるようです。私のところにも、「子どもにむし歯ができてしまって…」と、母親失格のように話されるお母さんが来ることがあります。私は、「いいじゃないですか。初期のむし歯なら治せますが、母親に"愛されていない"と思ってしまった子どもの心を治すことのほうが大変です」と応えています。むし歯ができないようにすることも大切ですが、愛情いっぱいに育てることは、それ以上に大事だと思います。

歯周病のはなし  1歳以上の約8割が…

◆歯周病の予防について
歯周病の原因となるバイオフィルムを作らせない、または取り除くことが何よりの予防になりますから、むし歯と同じように歯みがきが予防の基本です。  歯ブラシを選ぶときは、毛先が歯肉の溝に入っても傷つかないものを選び、力を入れずに丁寧にみがいてください。また歯磨き剤は歯周病予防のためのものを選ぶといいでしょう。

 

 

 

 

 

 



◆歯周病は静かなる病気

1本の歯ごとに起こるむし歯と違って、歯周病は歯肉から始まり、放っておくと歯の根、歯を支えている骨までの組織を広い範囲で壊していきます。また、むし歯は痛みという自覚症状がありますが、歯周病はサイレント・ディジーズ(Silent Disease:静かなる病気)と表現されるように、ひどくなるまで自覚されにくい病気です。そのままにしておくと、歯に問題がなくても自然と抜け落ちます。それも1本ではなく、そのゾーンにある数本の歯がまとまって抜けてしまうこともあるのです。進行は止めることはできても、現在の医療では元どおりに治すことができないのも歯周病のやっかいなところで、自覚が遅れるほど治療が難しくなります。最近では、糖尿病や心臓病などの病気との関係も明らかになってきていています。「かかりつけ歯科医」の必要性は、ここにもあるのです。  歯の大切さと病気をテーマにしてきましたが、次の機会で、高齢者の方々の口の中の問題、「在宅歯科医療」と「口腔ケア」についてお話ししたいと思います。

取材にお答えくださった大久保 満男先生

前・日本歯科医師会 会長
大久保歯科医院 院長