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気にかけていますか? 中性脂肪

目次

  • 中性脂肪は、体を動かすガソリンです。
  • 基準値50~149mg/dLを 超えると要注意!!
  • 動脈硬化の実行犯はコレステロール。しかし、その黒幕は中性脂肪です。
  • 中性脂肪が増える理由は、おおきく3つ。
  • ●腹八分目って、どれくらい?

中性脂肪は、体を動かすガソリンです。

 私たちの体内には、4種類の脂質が存在しています。それぞれに役割を持っていて、どれも欠かすことはできません。中性脂肪やコレステロールも、その脂質の1種です。

 私たちは食事によって糖質や脂質、タンパク質を摂りエネルギーにしていますが、そのままでは身体や脳を動かすことはできません。糖や脂質は胃や腸で消化され、肝臓に運ばれて中性脂肪となり、血液によって全身に運ばれ、筋肉や臓器が働くためのエネルギー源となるのです。このように中性脂肪は、自動車のガソリンと同じ役割を果たしてくれる身体になくてはならない脂質なのです。エネルギーとして使われなかった中性脂肪は、いざという時のために蓄えられます。



 皮膚の下に蓄えられのが皮下脂肪、小腸や肝臓などの臓器の周りにつくものを内蔵脂肪と言います。それぞれには次のような役割と特徴があります。

皮下脂肪の役割と特徴
・体温を保つ働きをします。
・外部からの衝撃をやわらげるクッションとなり、筋肉を保護します。
・燃焼しにくい。
・骨格などに負担をかけます。

内臓脂肪の役割・特徴
・臓器が動かないように一定の位置に保ち、クッションとなって内臓を守ります。
・燃焼されやすい。
・生活習慣病を引き起こす原因となります。



 一方、コレステロールは、細胞膜の材料や一部のホルモンを作るための材料になる脂質です。このコレステロールには善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)があります。悪玉コレステロールは、食物に含まれていたり肝臓で作られ、血液中を通って全身に運ばれ、細胞膜やホルモンの材料となります。材料として使われずに残った血液中の悪玉コレステロールを回収するのが、善玉コレステロールの役割です。

基準値50~149mg/dLを 超えると要注意!!

 中性脂肪の数値は、採血で調べます。食後の経過時間によって数字の幅がでるために、検査は食後10時間以上経った早朝空腹時に行います。正常な範囲は50~149mg/dL。前日の食事の内容によって数値が変動しますが、常に150mg/dLを超える人は注意が必要です。



 中には基準値より低すぎる方がいますが、この場合は、低くなっている原因や隠れた病気がないかを探します。

 中性脂肪は肝臓で作られるため、アルコールの過剰摂取などから起きる肝硬変などは、この数値が低くなります。また、バセドウ病の可能性もあります。甲状腺機能の亢進により新陳代謝が活発になり、頻脈、多汗、微熱などが続く病気で、車でいえば走りっぱなしの状態です。中性脂肪というガソリンをガンガン消費するため、数値が低くなるのです。

動脈硬化の実行犯はコレステロール。しかし、その黒幕は中性脂肪です。

 中性脂肪が増えると善玉コレステロールが減り、逆に悪玉コレステロールを増えてしまいます。善玉コレステロールが減って、悪玉コレステロールが回収されなくなったら、大変です。血液中に残った悪玉コレステロールは、血管の壁の中に潜り込み、血管を狭くしたり血管を硬くしてしまいます。これが動脈硬化で、心筋梗塞や狭心症、脳卒中といった命に関わる病気を引き起こすことになります。



 それだけでなく、中性脂肪が増えると悪玉コレステロールが小型化して、超悪玉コレステロール(小型LDL)が作られるようになります。サイズが小さいため、血管の壁のような狭いところでも簡単に入り込み、動脈硬化のリスクが倍増します。



 このように、動脈硬化の実行犯はコレステロールです。しかし、その黒幕は中性脂肪。直接手をくだしませんが、とても恐ろしいやつなのです。

 中性脂肪が直接的な症状を起こすわけではありませんが、生活習慣病を引き起こすメタボリックシンドロームの診断基準のひとつが中性脂肪です。定期健診を受けて、早めに気づき、早い段階で改善に取り組んで欲しいと思います。

中性脂肪が増える理由は、おおきく3つ。

 中性脂肪値が高くなる原因は、遺伝による影響が3割、食事などの生活習慣が7割といわれています。一体どのような生活習慣が問題なのか、また注意すべき点を考えてみましょう。

・中性脂肪を多く含む食品と摂る

 食品には中性脂肪を上げる原因となるものがあります。甘いスイーツやデザートなどの砂糖、果物などの果糖、ご飯やパンなどの主食で、「糖質」が多いものです。エネルギーとして消費されなかった分が中性脂肪となります。



 揚げ物やスナック菓子などの「脂質」の多いものも要注意です。脂質も重要な栄養素ですが、必要以上に摂ると中性脂肪として皮下組織や内臓脂肪に貯めこまれてしまいます。

 アルコールも要注意です。肝臓は、アルコールや脂肪酸(中性脂肪の前身です)などを分解しますが、アルコールを優先的に分解するため、後回しになった脂肪酸が貯まることになります。さらにアルコールは、中性脂肪を分解する酵素の働きを低下させるため、飲み過ぎると中性脂肪が分解せれず、体内に蓄積してしまうのです。



・食べ過ぎ

 食べ過ぎると中性脂肪が体の中に蓄積され、肥満を招きます。太ると体を動かすのが面倒になり運動不足に…。そして太った身体はその体重を維持しようと見合った分だけ食べようとします。太る→食べすぎ→運動不足→更に太るのサイクルの中で、中性脂肪が作られていくのです。こうならないように、摂取したカロリーと消費される量のバランスがとることを心がけてください。

●腹八分目って、どれくらい?

 健康や美容のためには、昔から「腹八分目」の食事がいいといいます。しかし、腹八分目ってどれくらいなのでしょう?個人の感覚ではなく、科学的に計算してみましょう。



 サンプルは身長160㎝の女性です。【図─1】の計算式をご覧ください。BMI(Body Mass Index/ボディ・マス・インデックス)は22が標準ですから、160㎝の女性の標準体重は56・3㎏となります。この体重と活動係数で1日に必要な消費カロリーを求めることができます。活動係数には、生活の中であまり動かない場合は25を、よく動く人なら30の数字を使って計算してください。消費する以上のカロリーを摂らなければ、体重は±0。これが腹八分目の食事量ということです。



・運動不足

 食べるだけ食べて、運動はほとんどしない。このような生活では、身体に取り組むエネルギーの方が消費するエネルギーの方が多いのですから、余ったエネルギーは脂肪に形を変えていくでしょう。



 そうならないように、適度な運動も取り組みたいものです。日常生活のなかでできることは、まず、歩くこと。出勤やお買い物などで、できるだけ歩く機会を増やしましょう。しかし、一般の方が運動で消費できるカロリーは、30分程度の普通のウォーキングで80〜100カロリー程度です。中性脂肪が気になる方は、食事の量と運動を組み合わせるの効果的です。



    ◆

 私の雑感ですが、聞いてください。3年後に2度目の東京オリンピックがやってきます。1回目は昭和39年でしたが、あの頃の我が家の『ご馳走』といえば、年2回、父のボーナスの時の外食でした。百貨店で買い物をして、最上階にあるレストランでハンバーグを食べさせてもらう。それが一般的な家庭に育った私の『ご馳走』でした。あの時代と比べると、今は毎日が『ご馳走』のようなものです。捨てるほど作って、お腹いっぱい食べ、残して捨てる。運動だって、昔は外食するのにも、バス停まで、それを降りた後の目的地までを歩いていました。今では玄関を開けたら、すぐ車のドアが待っています。食べ過ぎに運動不足。中性脂肪やコレステロールの数値が上がるのは当たり前で、糖尿病も年々増えています。このあたりで、一度立ち止まり、食事や運動のことを考えてみたいものです。きっと、生活習慣病の予防の支えになると思います。

取材にお答えくださった稲葉 直之先生

静岡済生会総合病院
内分泌代謝科 部長