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こどもの冬の感染症

今月の先生:荘司 貴代先生

静岡県立こども病院
小児感染症科

RSV感染症─こじらせると重い呼吸器疾患に

 RSV感染症は、鼻汁・咳・発熱がでて、4〜6日後に症状のピークがあります。乳児で肺炎になると2週間ほどかかります。小さい赤ちゃんほど肺炎になりやすく、呼吸が苦しくなると酸素吸入のために入院が必要です。早産で小さく生まれたお子さんであったり、先天的な病気があると、より重症になります。

 ウィルスであるため抗菌薬治療は効果がありません。特効薬はなく人工呼吸器を付けて症状のピークがすぎ、自然治癒を待つしかありません。ウィルスによるダメージをうけた肺に細菌が感染して重症化することがあります。また治癒した後も肺にダメージが残存することがあります。風邪を引くたびに咳が2〜3週間も長く続き、喘息発作のようにゼイゼイして呼吸が苦しくなることを繰り返します。

 残念ながらワクチンはなく、毎年重症例・死亡例がでています。RSV感染症の予防は難しく、集団保育をしている方ではどんなに気を付けても回避困難です。自宅療養中は可能な限り水分・食事をとり、安静にして体力温存をはかりましょう。咳でくるしくて眠れない・ミルクがのめない・食事が取れない状況になったら受診が必要です。

インフルエンザ ─2016年冬は、早い時期から流行

 インフルエンザはRSV感染症と症状が似ています。多くが数日の発熱・感冒症状のみで自然治癒します。RSVよりは肺炎は少ないのですが、高熱により熱性けいれんをおこすことが多いです。また痙攣や意識障害が長く持続する場合は、インフルエンザ脳症が疑われます。日本人に多く、年間50人が発症し、10%が死亡し、20%に後遺症を残しています。  インフルエンザに罹患した場合、抗インフルエンザ薬としてタミフル(内服)、リレンザ(吸入)があります。残念ながらこの効果は万能ではありません。発症から72時間以内に服用することで、発熱期間を1日短縮するものです。肺炎や脳症を防ぐ効果はありません。

 幸いインフルエンザにはワクチンがあります。6ヵ月以上の全ての方は接種することをおすすめします。妊婦さんはインフルエンザで肺炎をおこし重症化しやすいです。妊娠していても安全に接種して免疫をつけることができます。生後6ヵ月までの赤ちゃんは、お母さんが妊娠中にワクチンを接種していると、感染を予防することが知られています。胎盤を通じてお母さんからインフルエンザの免疫をもらうことができるからです。妊婦さんはご家族と一緒に積極的に接種しましょう。 ●インフルエンザワクチンの効果  インフルエンザは毎年流行する型が違い、ワクチンの効果も3〜4ヵ月しか持続しないため、毎年うつ必要があります。WHOが流行する型を予想し、各国でワクチンが製造されます。ワクチンの効果は、毎年流行が終った後にしかわかりません。ワクチンをうった集団とうたない集団で、インフルエンザ罹患率を比較することで表されますが、毎年ワクチンの予防効果は30〜70%と幅があります。



 例えば、1000人ずつの集団でワクチンを接種したグループでは70人、接種していないグループで200人発症したとします。ワクチンを打つことで(200─70/200)x100=65%の予防効果があった、ということになります。ワクチンをしたのに発症した70人の方は悔しくて"”ワクチンが効かない"と苦情をいいたくなります。しかし、うたなければ感染しただろう130人の方は、"ワクチンをうったおかげでかからなかった!"とは言わないので効果を感じにくいのです。  ワクチンの型が流行したウィルスと合っていなくても、予防効果があります。医療現場で働く医師や看護師、薬剤師は毎年接種しています。ウィルス型が合っていなくても、ワクチン接種している施設では冬の間の欠勤者が少ないことが知られています。

ノロウィルス─嘔吐や下痢、腹痛、時には発熱も

 ノロウィルスはおとな・こどもに関わらず嘔吐・下痢症をおこし脱水症が問題になります。3〜4日で回復します。

 ワクチンはなく、非常に広がりやすく、感染対策を厳重に行っていても防ぎきれる相手ではありません。レストランや病院でも流行することがあり、毎年集団食中毒や院内感染としてニュースで報道されます。吐物や便1gの中に10億個のウィルスがありますが、たった10個のウィルスが口に入るだけで発症します。ノロウィルスは量が多く、消毒薬が効かないことが予防をさらに難しくしています。トイレの便座やドアノブにはウィルスが付着しています。トイレ使用後は、石鹸と流水での手洗いはかかせません。



 乳幼児は治癒後も3〜4週間はウィルスが消えません。下痢がおさまって元気になったら通園を再開できますが、少量のウィルスが排泄していることが前提になります。ウィルスが消えたことを証明できる検査はありません。オムツ替えは他のこども達と離れたところで行い、交換後の石鹸・流水手洗いを徹底しましょう。またオムツ替えは調乳場所から離れていることも重要です。

嘔吐物などには ウイルスが大量に存在 する可能性が! 「すばやく」「適切に」 処理して感染を 防ぎましょう

  

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 冬のウィルスと戦うには、普段から体力を付け、罹患しても重症化しない強い体を作ることが重要です。食事・睡眠を十分に取り、規則正しい生活をして体力を付けましょう。外出後と食事の前は石鹸で手を洗いましょう。家族に喫煙者がいるこどもは、肺炎を起こしやすいことが知られています。家族はご自身の健康のためにも禁煙をしましょう。またこども達が接種するワクチン(ヒブ・肺炎球菌)を遅れないようにもれなく接種することで、細菌性肺炎を予防することもとても重要です。