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こどものぜん息

今月の先生:勝又 元先生

静岡県立こども病院
総合診療科

ぜん息とは…

 ぜん息(ぜんそく)は正しくは『気管支ぜん息』といいます。つまり、空気の通る管が何らかの原因で細くなり、そのため息が苦しくなって喘ぐ様な呼吸をする病気、です。また、この苦しい状態が良くなったり悪くなったりを繰り返すことも重要な特徴です。症状としては『ヒューヒュー、ゼーゼー』という音を出し、苦しそうな呼吸をしたり咳をしたりすることが多いです。

 しかし普段から発作に慣れている重症の子は、自分で呼吸をセーブしているためその音に気付かなかったり、苦しい表情を出さなかったりする可能性があります。また、咳だけを症状とする方もいます。

原因は?

 この原因は、アレルギーによるものとそうでないものに大別されます。

 アレルギーではダニやホコリに代表されるハウスダスト、スギやヒノキに代表される花粉がよく原因になります。



 他にもペットの毛やフケ、エアコンのカビなど、空気と一緒に吸い込むものが原因となりやすいです。しかし、食物アレルギーの一症状として喘息が起こることもあり、原因をしっかり突き止めることは大切です。  アレルギーでないものの原因としては、タバコの煙とウイルス・細菌によるかぜが多いです。また様々な大気汚染物質でも生じます。蚊取り線香、花火、焚き火、化粧品やヘアスプレーでも起こることがあるので気をつけましょう。



 また見落としやすいのですが、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(ちくのう症)が一因として生じることも多いので、鼻づまりや鼻汁の多い方は注意が必要です。原因は一つではなく、複数のものが組み合わさっていることが多いので、何かを目の敵にするのではなく、トータルで考えた方が良いでしょう。

病状と治療

 次に喘息の病状を説明します。少々乱暴なたとえ話としてお話しします。  空気の通り道は例えば高速道路を考えてください。高速道路(気道)には車(空気)が走っています。ここに悪い宇宙人や怪獣がやってくると、映画ではミサイルでズドーンと攻撃しますよね。これが通常の免疫です。ばい菌やウイルスが気道に入ったとき、それを体が有害なものと判断して、抗体や細胞を使ってやっつけるわけです。

 ではウサギさんやシカさんが間違えて高速道路に入ってきたときはどうでしょう。特に害はないのでミサイルはいらないですよね。でも過剰な反応をしてミサイルを撃ってしまう場合もあります。これが体には無害なスギやホコリに対して過剰な免疫反応を起こしている、『アレルギー』です。

 さてそうなると道路はどうなるでしょう。爆発で道路は穴だらけ、あちらこちらで炎がメラメラ。いろんな破片も散乱しているのに、ミサイルはまだドカドカ飛んできています。車が走れるスペースは限られ、大渋滞です。 まとめると
①通れるところが狭い
②破片が散乱
③炎上している
④ミサイルが飛んでいる



 さてさて、とにかく早く車(空気)を通さないといけません。どうすればいいでしょうか。
①まずは車線を拡げて車を通す
②瓦礫を撤去して走りやすくする
 これでとりあえず車は通れます。でも根本的ではないですよね。まだミサイルは飛んでいるし炎上しているところもあります。そこで
③炎を消す
④ミサイルを作らせない ということも同時に進めます。
専門用語でまとめてみます。 ①気管支拡張薬 ②去痰剤 ③抗炎症薬(ステロイド) ④抗アレルギー薬  お話ししてきた仕組みから、③④が本質的な治療で、①②は対症的であると分かるでしょう。治療の基本は抗アレルギー薬と抗炎症薬で炎症を起こさせない、発作を起こさせないことです。それでももし発作が出たら気管支拡張薬や去痰剤を追加する、というやりかたが理にかなっているというわけです。

正しい治療をしないと…

 では、もし正しい治療をしないとどうなるでしょうか。

 炎症を抑えず、拡張薬ばかり使うとどうなるでしょう。さきほどの道路ですが、気管支は周りに軟骨という固い部分があるため、道を拡げるのには限りがあります。そのため炎症を抑えずに拡張薬のみで治療する事を続けると、道路全体が燃え盛っているのに通り道を作れない、というような手遅れの状態にもなりかねません。



 年に数回程度の発作なら適宜の吸入だけでも構いませんが、多い方は近くのアレルギー医に相談してみてください。

治療の目標

 ぜん息治療の目標は、他の子と全く同じかそれ以上の活動をしてもらうことです。日常生活に支障がないように、勉強でも運動でも、旅行や趣味も、そして将来的には恋愛も結婚においても、何の支障もないように治療することが肝要です。



 運動すると発作が出るから運動しない、はしゃぐと咳が出るのでおとなしくする、という方がいます。しかし何かを我慢して発作を出さないようにするのではなく、ちゃんとした治療を行うことによって何でもしていいよ、というのが現在のアレルギー医が目指すところです。  私が「三位一体の医療」と呼んでいることがあります。ご家族は環境整備を努力し、お子さんは薬を吸ったり飲んだり頑張ります。我々はそれに助言をし、サポートする立場だと思っています。



 「修学旅行で無事発作を出さずに行けました。」「去年は運動会に出られなかったけど、今年はかけっこで2位になれたよ!」といったような報告をよくいただきます。このときが我々アレルギー医の至福の時です。よかったねって皆で手をつないで喜べます。みんなががんばったから、だからよくなることが出来たのですから…。