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こどものけいれん(ひきつけ)とてんかん

今月の先生:渡邉 誠司先生

静岡県立こども病院
神経科

けいれん(ひきつけ)をみたときの気持ち

 お父さん、お母さんは、こどものけいれん(ひきつけ)を見たことがありますか?  『ある』と答えた方。さぞかし心配だったことと思います。『この子は、死んじゃうんじゃないか?』って思っちゃいますよね。  ネットをみたり、お医者さんに相談すると、「どんな動きで、目はどっちをむいていて、右と左に違いはなかったか」、「時間はどのくらいだったかしっかりみておく」、などといわれますが、この一大事の時に、そんなことできるわけありません。



 かくいう私も自分の息子が1歳でけいれんした時はダメでした。車に乗って妻の買い物を待っていたら、ウッ、ウッという苦しそうな声。後ろを振り向くと息子が全身を突っ張っている!さあ、いつも偉そうに言っている小児科医の出番だ。まず時計をみて・・・、1分。え!まだ、1分?。3分。うそでしょ!もう、30分はたってんじゃない?息子は、一点を見つめ、泡を吹きだすは、顔色は真っ青!普段、長くても5分も続くことはないから、などといっている小児科医の姿はありません。そこまで我慢するのが精一杯でした。息子を抱えて救急車を呼んだ時には、けいれんは…、治まっていました。息子の体は非常に熱かったです。

 そうです。このけいれんは、熱性けいれんです。

 私がこんな具合ですから、皆さんには、冷静に観察を…なんて言えません。経験しないと絶対にわかりません。初めての時は、救急車を呼んでください。何度か、あるいは、兄弟で経験があるときは、ゆっくり観察して、落ち着いて行動してくださいね。

 こどもの脳は、発展途上で、感受性が高いので、すぐけいれんをします。 その多くはてんかんでないけいれん、あるいは、けいれんのような動きです。てんかんであっても将来に持ち越すことは、多くありません。

てんかんではないけいれん

①熱性けいれん
 熱性けいれんは、日本人の10%に生後6か月から5歳くらいまでに38℃以上の発熱で起こります。ただ、インフルエンザなどでは、これ以上の年齢でも起こります。
その後にてんかん発症が心配なのは、
●全身でなく、体の一部分であったり、左右差のあるけいれん
●15分以上のけいれん
●1回の発熱で24時間以内のうちに2回以上のけいれん
ですが、これらがあってもてんかんになる人は10%もいないので安心してください。これらのリスクがあると、ダイアップ®坐剤の予防投与が行われますが、発熱とけいれんの間が短く(時にはけいれんが先)間に合わないことや、ダイアップ®を挿肛するとふらふらになって無理ということもあります。熱性けいれんの再発率は、30〜40%なので、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。



②泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)

 泣き入りひきつけは生後6〜12か月が主で、2歳くらいも希ではありません。大泣き、びっくりが誘因です。意外と知られていないのですが、家族歴があったり、鉄の不足と関係しています。離乳食がうまく始められなかったり食が細かったりすると、ちょっと強く泣くと、息を止めてかなりひどく紫色になります。頻回に起こすので心配ですが、ご飯をもりもり食べるようになるとよくなってきます。

③軽症胃腸炎に伴う良性けいれん
 これも、乳幼児に多い群発するけいれんです。ロタウィルス感染が契機のことが多く、必ずしも重症である必要はありません。1回の投薬でよくなります。

④迷走神経の問題による失神
 自律神経(迷走神経)の反射による失神もあります。周りに多く人がいても意外と観察されていないので、てんかんと間違えられます。もちろん、不整脈など心配な病気が隠れていることもありますので、一度はしっかり検査をすることが必要です。

てんかん

 けいれんした直後の親御さんの心配は、『死ぬんじゃないかしら?』ですが、落ち着くと次は、『てんかんじゃないかしら?』『一生薬を飲まなくてはいけないんじゃないかしら?』に移ります。前述の通り、多くの場合は、そうではないのですが、たとえてんかんであっても、こどもの場合、70〜80%はよくなります。



 治りやすい良性てんかんをあげてみます。

①新生児と乳児に起こる良性のてんかん
 家族に誰か同じようなけいれんをしたことがある場合が多いです。いくつかの遺伝子異常がわかっています。ほとんどの場合、家族と同様の経過をたどります。 ●新生児の場合、生後2〜3日けいれんをします。回数が多いことがあるのであわてます。通常1週間、長くても6週間以内にけいれんはなくなります。 ●乳児の場合、生後4〜8か月に発作が始まり、最初から発作が群発します。1歳6か月までにほとんどがけいれんしなくなります。 どちらの場合も、きちんと検査を受けて他のてんかんを否定してもらうことが必要です。

②中心・側頭部に棘波をもつ良性てんかん(BECT、ローランドてんかん)
 7〜10歳を主体に男の子に多く起こります。こどものてんかんの15%と一番多く、寝入りっぱなか、寝始めたときに、顔をゆがめたり、よだれで口をピチャピチャいわせます。徐々に全身に広がることもあります。大体、6回くらいで治まりますが、続く場合は薬を使います。大抵、思春期を過ぎると治ります。

③早期良性小児後頭葉てんかん (Panayiotopolos症候群)
 3〜6歳で、睡眠中に嘔吐、顔面蒼白など自律神経症状を起こし、全身が脱力したり、びくびく動きます。半数近くが、長い発作を起こすため、けいれんしたときは非常にビックリしますが、多くは1回で終わります。  ほか、有名なものは、話が途切れて、ボーとする小児欠神てんかんなどもあります。思春期になってくると若年性欠神てんかん、若年性ミオクロニーてんかんなど、薬が効きやすいけれど、やめにくいてんかんがあります。小児特有の年齢依存性てんかん(West症候群、Lennox-Gastaut症候群など)も診断が難しいので必ず、お医者さんに相談してください。

 器質的な原因のあるものとしては、脳の血管奇形(もやもや病、脳動静脈奇形)、脳の形成異常、時に脳腫瘍によるてんかん発作も見られます。もやもや病の時は、ラーメンでふうふうしたときにしゃべらなくなったなどお医者さんの十分な問診と連携が必要になります。

 そのほか、いろいろなてんかん、てんかん症候群がありますが、字数の都合上、割愛します。また、次々と新しい抗てんかん薬が発売され、選択肢も増えてきました。てんかんと診断されたときは自己判断の断薬は禁物です。 ネット情報に頼りすぎないで、近くの小児科の先生にしっかり生の情報を聞いてください。

 最後に、けいれんをした子は、少し頭がいいと思っているのは私だけではないと思います。(少し落ち着きがないですがね:)